都会に根を張る巨大植物のようなマンション。実は植物が枯れるように、手入れをせずに放っておくとすぐに寿命を迎えてしまうそうです。では、どのような人たちがメンテナンスをしているのでしょうか。今回は、陰で快適な暮らしを支えているマンション設備管理スタッフの仕事に、自宅マンションのエレベーターに閉じ込められた経験を持つライターが迫ります。

 

お話をうかがったのは…

マンション設備管理を専門に行う『アクセス』代表の金井さん(写真左)、そして専務の東さん(写真右)。ともに10年以上の経験があるベテランで、元料理人、元自動車整備士と異色の経歴を持つ。

 

 


 

マンションって、メンテナンスしないとどうなるの?

 

編集者

突然なんですけど、マンションってまったくメンテナンスしないとどうなるんでしょうか?

 

東さん

あー、それはスラム化しますね。

 

金井さん

世界中から設備管理の仕事が消えてメンテナンスが行われなくなると、すぐにいろいろなところが劣化してしまいます。そうすると、水も電気も停まるので、人々は生活ができなくなりますよね。ということは、経済活動が立ち行かなくなります。

 

編集者

えー!?マンションのメンテナンスひとつで世界が経済崩壊に。モヒカン男たちがイキイキする世界になってしまう。

 

東さん

具体的にいえば、まず給水ポンプの部品が劣化するんですよ。ポンプの寿命は15年程度とされているので、これが故障すれば断水になります。

 

金井さん

環境と使用頻度で変わりますけども、ノーメンテナンスだともっと寿命が早くきますね。水廻りはそれ自体の機能が停止するだけでなくて、たとえば配管から水が漏れると、周辺にまで影響を及ぼすんです。

 

東さん

水って周りを腐らせたり、サビさせたりするんですよ。知らず知らずのうちにもろくなっているから、地震が来たときに、急にポキッと…。火災報知器もそうです。肝心なときに鳴らなければ、気がついたときには周りが火の海に…。

 

編集者

わ、それは怖い…。サイレントなのはずるい。

 

金井さん

だからこそ、常日頃の点検が必要なんです。ただ建物を守るだけでなく、多くの方が住んでいるので、その命も守っているのと同義です。マンションの設備管理の仕事は社会貢献度の高い仕事だと思っていますね。

 


 

設備管理の仕事って、どういうことをしているの?

 

編集者

マンションの設備管理の仕事は、具体的にはどのようなことをされるのですか?

 

金井さん

大きくわけると、通常の設備点検と消防設備点検がありますね。通常の点検では、給水ポンプや配電盤の点検をはじめ、エントランスや各階の照明器具が点灯しているかも見ますし、壁のひび割れについても目視で確認しています。

 

(配電盤の点検。クランプメーターと呼ばれる機械を使い、過電流を調べている)

 

(耐圧試験機と呼ばれる装置を水道管につなぎ漏水をチェック。配管にかけた圧が抜けていくと漏水の可能性あり)

 

(ときには現場で応急処置も。写真は緊急配管工事をしている場面)

 

東さん

それに、屋上部分も大事なチェック項目です。紫外線でいろいろなものが痛むんですよ。貯水槽も放っておくと割れてきますし、屋上には防水シートが敷かれているんですけど、それもはがれてしまうんです。だから、月に1回は確認しないといけません。

 

編集者

屋上に防水シートなんて敷いていたんですか、はがれると雨漏りの原因になりそうだ。不具合を見つけられたら、どうされるんですか?

東さん

もし不備があれば、それをオーナー様や管理会社に報告して、修繕の見積もりも併せて提出しています。可能なら自分たちで直しますし、無理なものは協力会社にお願いして工事を行っています。

 

金井さん

壁の割れなどの不備に気がつくのは私たちよりも、マンションに住む入居者様の方が敏感かもしれません。分譲マンションであれば長く同じ方が住まわれているので、変化に気づきやすいんです。逆に賃貸マンションは入居者の方の出入りの頻度が高くなるから、不備があっても、そういうものかと見過ごされてしまうこともあります。

 

編集者

そう言われると、住んでいる賃貸マンションの壁や電球が急に気になり始めました…。消防設備点検はどういった仕事があるんでしょうか?

 

東さん

消防設備の点検は有事の際に、人命を左右する重要な作業です。ビル・マンションには自動火災報知設備・屋内消火栓・スプリンクラー・防火戸などさまざまな設備が備わっているので、これらの設備が正常・正確に作動するかの点検を行います。普段はなんの意味もなさそうな設備たちですが、いざ役目を果たすときに正確に作動しなければ、尊い命が失われる場合があります。私たちは、入居されていらっしゃるすべての人々の安全を任されていると言っても過言ではないですね

 

(マンションのいたるところに設置されている消火栓の検査)

 

(消火器のチェック。中身がきちんとあるか、レバーなどに問題はないかを確認)

 

(操作盤のチェックは、トランシーバーによって行われている。)

 

編集者

仕事道具はどのようなものがあるんでしょうか。

 

金井さん

かなり種類があって、一言ではいえないですね。どういう検査を行うかでも持ち出す道具は変わってきます。

 

(水廻りの検査で使う道具の一部。このほか、多彩な道具・装置がある)

 

 

編集者

かなり種類があるんですね!こだわっている工具はありますか?

 

東さん

私は、ライトですね。機械室はだいたい暗くて、細かい部分を確認するときに明かりがないと見えないんですよ。だから、明るさにこだわって選んでいます。

 

編集者

おぉ、職人っぽい感じがします。

 

金井さん

これは、間違いなくマイナスドライバーですね。

 

編集者

え、マイナスドライバー?

 

金井さん

ネジを締めるだけではなく、テコの原理を使ってマンホールも開けられますし、滑り止めをひいてドアの下に差し込めばストッパーにもなります。コンクリートに埋もれている配管を調べる際にも、ノミのように使って掘り起こせるんですよ。

 

編集者

無限の可能性を秘めていますね。

 

金井さん

いろんなことに使うので、いつも3~4本は現場に持っていきますし、年5本は消費していますね。折れるとショックだから、高いものは買えなくて。

 

編集者

…マイナスドライバーの年間消費本数なんて初めて聞きました。

 

(アイデア次第で使い方が七変化。警察からの職務質問時に自家用車の中に入っていると、いろいろ疑われるらしい。みなさんも気を付けよう)

 

 


 

マンション設備管理って、もうかるの?

 

編集者

あの、やはり世の中はお金ですし、聞きにくいですけど業績はいかがですか?

 

金井さん

ありがたいことに2017年に代表に就任して以来、4期連続で右肩上がりになっています。

 

編集者

2020年も伸びたのはすごいですね。

東さん

昨年比でいえば、大阪本社の管理物件は500件程度から740件以上に増えました。ちなみに2021年の3月は大阪本社が過去最高益になり、売上は10年前の2倍以上になっています。

 

編集者

それだけ躍進している理由はどこにあるのでしょうか。

 

金井さん

うーん、お客様の要望に応え続けてきたことで、結果的に仕事の幅が広がったのはひとつありますね。

 

東さん

設備点検だけでなく、余裕があれば貯水槽の清掃や火災報知器のリニューアル、給水ポンプの交換なども行うようになりました。自分たちでできない工事も協力会社に依頼していますので、やっていないのはエレベーターの設備点検くらいでしょうか。

 

金井さん

「これしかできない」と思われるのは、よくないなと。でも、銀行の書類の職業欄にどう書いたらいいかわからなくなるんですけどね(笑)人の役に立とうという気持ちでやってきたことが評価されているのか、口コミで評判が広がって新規案件につながることもあります。

 

編集者

営業いらずといった感じなんですね。

 

東さん

お客様目線で、正直な仕事をしようという想いが根底にあります。たとえば、ある程度年数が経った給水ポンプに水漏れがあった場合は、交換してしまえば早いし、もうけもでるんです。でも、ほかの選択肢がないかを探して、このパーツだけ交換すればまだ動くとわかれば、そういう提案もしています。売上は下がりますけど、その方がお客様も助かりますからね。

 

編集者

損して得を取るという言葉を体現されていらっしゃいますね。

 

金井さん

それと、がんばる社員が正当に評価されるようにしました。私も専務も叩き上げでいまも現場に出ているから、社員たちがしっかりと仕事をしているのか、手を抜いているのかはわかります。積極的な人たちを上に引き上げていくと、新しいステージでさらに努力をしてくれるので、会社を押し上げてもらえました。

 

東さん

飲食業界でエリアマネージャーをしていた経歴を持つ社員がいるのですが、元管理職なだけあって彼は協力会社やお客様との関係づくりが上手なんです。そこを認めて、入社2年目に主任に抜擢しました。社歴に関係なくチャンスも増えましたけど、実力はしっかり見ているので、ある意味きびしくなったかもしれません。

 

編集者

公正公平に実力を評価するというのは、社員に対しても正直に接するということですか。

 

金井さん

それはありますね。就業規則もわかりやすい場所に常に設置しています。

 

東さん

マンションに住まわれる方の安全と快適さを保つ仕事がしたいと思って、この世界に飛び込んだんですけど、同じような気持ちを持った方がまっすぐ働ける会社にしたいですね。

 

編集者

すばらしい志ですね!金井さんも、やはりそういう気持ちを持って入社されました?

 

金井さん

いえ、私は楽そうな仕事に就きたいなと思って入りましたわ。

 

東さん

その正直さはいらんねん!

 

 


 

マンション設備管理って、どんな人が向いている?

 

東さん

楽したいなんて社長は言ってますけど、一番働いているんですよ。私たちの仕事は定期点検だけでなく、管理物件の設備にトラブルがあれば駆けつけて一次対応を行う緊急対応も行っているので、交替で夜勤もあります。そのローテーションにも社長が入っています。

 

編集者

そこまでがんばるのは、すごいことですね。

 

金井さん

社員に長く勤めてもらいたくて、私の代になってから基本的に土日祝を休みにしたんです。休みを増やせば多くの人数が必要になるので、カバーするために役員は全員現場に入っています。

 

東さん

とはいえ、そこが課題で。社長業務はほかにもあるので、社員数を増やしている最中なんですよ。設備管理の仕事は覚えることが多くて、一人前になるのに3年は見ないといけません。

 

金井さん

そういうこともあって、働きやすい職場づくりを進めています。

 

編集者

では、人集めが急務ですね。どういう人が向いているというのはありますか?

 

金井さん

強いて言えば、接客好きな人は向いています。技術職ではありますが、設備の先にはお客様や入居者様がいます。協力会社との連携も含め、コミュニケーションが大事な仕事ですね。

 

東さん

設備の経験はなくていいんですよ。私は元自動車整備士で、社長は料理人と異業種から転職していますし。

 

編集者

それは意外でした。男性の職場のイメージがありますが、女性も活躍できるんですか?

 

金井さん

もちろんです。消防設備点検で火災報知器の点検をする際は、お部屋の中に入って作業することになります。お昼どきに伺うと、主婦の方がひとりでいらっしゃることも多いです。なので、女性に対するニーズは確実にあります

 

東さん

実際、当社でも女性社員は活躍していて喜ばれているんですよ。

 

編集者

それも意外でしたね。働くにあたって資格も必要になりますか?

 

金井さん

「第二種電気工事士」などの必要な資格の取得については、会社でバックアップもしています。資格を取得すれば能力給にも加味しているので、収入も増えます。

 

東さん

利益が増えた分だけ社員の休日や福利厚生の拡充に回しているので、会社としてのもうけは最低限にしていますが、それで結果が出ているのでいいかなと。「自動車を買いたいな」「休日に彼女とデートしたいな」なんて当たり前の願いかもしれませんが、その当たり前がきちんと叶う職場でありたいですね。

 

 


 

マンション設備管理の面白さって?

 

編集者

いろいろなお話をお聞きしましたが、仕事の面白さはどこに感じていらっしゃいますか?

 

金井さん

当社で身に付く技術は、日常にそのまま応用できるんです。ちょっと前にマイホームを購入したんですけど、コンセントや照明器具を増設したり、水道管を分岐させたり、けっこうカスタマイズしました。

 

東さん

私も自宅の蛇口の交換やBSアンテナの設置、あとエアコンも移設しましたね。

 

編集者

業者泣かせな技術がめちゃくちゃ身に付くと。

 

東さん

そういうこともあるのか、戸建てに住んでる社員が大半です。

 

編集者

自分の腕を試したくなりますものね。

 

金井さん

それに、自分の頭で考えて行動できる仕事なんです。むずかしい状況を、アイデアをひねり出して対処できれば達成感があります。長く働いて引き出しが増えるほどアイデアの幅も広がるので、3年なら3年、10年なら10年やっただけの面白さがありますね。

 

東さん

ビルディングドクターという言葉があるんですけど、たしかに建物って人体に似ているなと思います。やっぱり放っておくと悪くなるんです。高層建物の耐用年数は50~70年ほどですが、雑なメンテナンスでは、そこまで持ちません。自分たちの仕事は、建物が本当の寿命を迎えるまで、健診や治療を行って健康な状態を維持することにあります。

 

金井さん

だから『アクセス』のHPで、マンションのかかりつけ医とうたっているんです。現場によって状況が違いますし、コミュニケーションの取り方もお客様のタイプによって変わります。パターン化できないから、AIに取って代わられることもありません。それにマンションは、人々が暮らす限り一生なくならないもの。マンション設備管理は、これから何十年先も続けられる仕事です。

 

 

 

 

あとがき

いかがでしたでしょうか。マンションがいつまでも居心地の良い場所として存在する陰に、設備管理スタッフの活躍があったんですね。「衣・食・住」が揃っていないと人間は生活ができませんし、そういう意味では経済も支えているというスケールの大きな話でした。また、今回取材した『アクセス』は急成長中の企業。同社には努力を認めてくれる上司が揃っているので、働いて得られるやりがいも相当大きいのではないでしょうか。気になった方は、ぜひ同社のHPもご覧ください。

 

取材協力:株式会社アクセス

企業HP(http://access-co.net/index.html

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